東京都”中央区びと。”に聞く中央区おすすめスポット
佐山 泰央
ダイワロイネットホテル銀座PREMIER
銀座一丁目駅から徒歩約1分の好立地にありながら、都会の喧騒から離れ、静かに心地よい時間をお過ごしいただけます。ビジネスに観光に優雅な時をご堪能ください。
- ホームページ
- https://www.daiwaroynet.jp/ginza/
- 住所
- 中央区銀座1-13-15
- 電話番号
- 03-5159-1380
波除神社
築地場外市場を左手に見ながら波除通りを進むと、その正面、突き当たりに見えるのが波除神社です。その創建は、万治年間（1658年～1661年）と伝えられています。この万治年間には、木挽町の海浜を埋め立てる、いわゆる築地（地を築く）の工事が進められていました。とはいえ波のうねりが高いため、堤防を築いてもすぐにさらわれてしまいます。あるとき海面に光を放って漂うものがあることに気づき、拾い上げてみると稲荷明神の像でした。この像を、社殿をつくり祀ったところ、波風はおさまり、難航を極めていた埋立工事が無事完了したと言われています。「波除（なみよけ）」というこの神社の呼称は、この埋立工事に由来するもので、航海の安全や災難除け、厄除けなどの神として、人々に篤く信仰されてきました。
また、築地は江戸時代から「食」との関わりが深い場所で、境内には「海老塚」や「活魚塚」「玉子塚」「すし塚」「魚がしの碑」など、食文化への感謝をあらわす塚や碑が残されています。いまでも築地場外市場では、新鮮な魚介類を使った料理や玉子焼きなどを味わうことができますね。当ホテルをご利用になるお客さまに、波除神社への散策をご案内するときには、波除神社参詣の帰り道に築地場外市場に立ち寄り、寿司や海鮮丼など新鮮な魚介類を使った料理を味わうことをお勧めしています。食べ歩きのできる店頭販売のお店も増えているので、お刺身、揚げ物、玉子焼やシュウマイなどを、青空のもとで頬張ることもできます。波除神社では、秋に「お初穂祭」や「包丁式」という神事が執り行われています。食の安全や収穫への感謝を捧げて、食文化を伝承する重要な役割を担っているのですね。
波除神社に参詣されるみなさまに、お伝えしておきたい魅力を、もう二つほど…。それは獅子頭と御朱印です。境内に入ると、高さ2メートルを超える雄獅子の厄除天井大獅子と雌獅子のお歯黒獅子が参詣者を迎えてくれます。神社の創建時より「獅子は風と雲を従える龍虎を一声でひれ伏させた」とされているように、圧倒的な迫力で参詣者を邪気から守ってくれているのでしょう。関東大震災でも消失を免れたという一対の獅子頭は、平成4年に中央区区民文化財に指定され、現在は社殿に安置されています。次に、波除神社の御朱印ですが、何といってもその種類の多さには驚かされます。通年で頒布されているものと、季節や祭事ごとにいただける限定のものがあり、なかでも人気なのは「つきじ獅子祭」のときに頒布される期間限定の「切り絵御朱印」になります。切り絵と敷き紙に分かれ、重ねると色鮮やかな御朱印になります。ちなみに通年で頒布される御朱印には、季節によって柄が変わる木の栞を付けていただけます。
私がこうして波除神社をご紹介したいと思ったのは、東京を訪れる訪日外国人や日本人観光客のみなさんに、「食と祈り」が交差する築地の豊かな街並みを感じてほしいと思ったからです。「災難を除き、波を乗り切る」という祈りの想いは、現在もなお地元の人々に受け継がれ、この神社が愛され続けている。そのことによって、この地域の発展と安定が築かれているのだと思うからです。人々の営みを支えてきた祈りの地が、美食を求めて訪れた場所から、ほんのわずかな距離にあることに気づいていただき、「神社を訪ねてみよう」と行動するきっかけになれば幸いです。
