東京都”中央区びと。”に聞く中央区おすすめスポット
住庄ほてる
江戸の名残をとどめた普段使いのできる日常の湯宿です。東京散策の拠点として、ビジネスの疲れを癒す憩いの場としてご活用ください。全83室。
- ホームページ
- https://sumisho-hotel.co.jp/
- 住所
- 中央区日本橋小舟町9-14
- 電話番号
- 03-3661-4603
人形町エリアの和菓子屋
私が営む住庄ほてるの2軒隣りには、かつて「清寿軒」さんという和菓子屋さんがありました。厨房で手づくりされたあんみつやきんつば、練り切りや栗きんとんなどを、幼い頃から味わってきました。現在は、堀留町交差点の少し手前の通りに移転されました。「どら焼き」が人気で、香ばしい焼き目の皮に、小豆の粒をほどよく感じる手練りの餡がたっぷりと入って、絶妙の味わいです。文久元年(1861年)の創業という伝統を、7代目を継がれた息子さんが、しっかりと守っているのですね。そして「どら焼き」といえば、同じ通りにある「日月堂」さんも人気店です。創業は明治10年(1877年)。140年余りの歴史のある老舗ですが、「抹茶生どら焼き」「あんず生大福」など、工夫を凝らした新作づくりにも積極的に取り組んでいらっしゃるようです。

このほか、京都での創業以来、400年以上にわたって京菓子をつくり続ける「玉英堂」さんの「虎家喜(とらやき)」は、「どら焼き」とは趣向を変えた逸品ですし、さつまいもをイメージしたふかふかの皮に餡が包まれた黄金芋が有名な壽堂さんや水天宮のお守りである梵字の入った「御守最中」を出される三原堂さんをはじめ、初代の秘伝帳をもとに一子相傳で代々受け継がれてきた江戸和菓子、赤飯に、茶碗蒸菓子「風鈴(ぷりん)」の「つくし」さんなど、それぞれ個性あふれる商品を提供されています。そうそう、人形町といえば、水天宮前にある「重盛」さんや人形町交差点近くの「板倉屋」さんの人形焼も、この街の名物として忘れてはなりませんね。
ご紹介させていただいたのは、人形町通りの近くで営業する和菓子店の一部に過ぎません。そもそも、人形町エリアにこれほど多くの和菓子店が軒を連ねるのは、どのような訳があるのでしょう。それは人形町の歴史とも関わりがあるようです。人形町の旧町名は芳町といい「元吉原」と呼ばれた花街でした。芳町には料亭が数多く立ち並び、これらの料亭では、練り切りや羊羹などの和菓子をお出しして、お客さまをもてなしたそうです。このため料亭に和菓子を納める店が、数多く生まれ、営み続けることができたのでしょう。それぞれの店は、その店ごとの味わいを追求し、見た目や材料にもこだわり、お茶菓子として出しやすい、選ばれる商品づくりに励み、競い合いました。各店各様の工夫や持ち味が生かされた和菓子がつくられるようになったのは、そんな訳あってのことではなかったかと推測します。


最初は競い合うライバル店同士であっても、それぞれの工夫や持ち味を生かしながら、時代のニーズやお客様のご要望に応え続けてきたからこそ、それぞれ独自の魅力と存在感を築き上げられたのだと思います。そして、そこには各店が響きあい、輝きを増していく理想的なライバル関係があるような気がします。現在の人形町に残された料亭は「濱田家」さんだけになりましたが、各店は人形町を訪れる人々に寄り添い、手間を惜しまない姿勢で、それぞれの持ち味を生かしたその店だけの味を追求しています。そんな人形町の和菓子店巡りはいかがですか?ご紹介したお店は、どこも老舗ばかりで、敷居が高く感じるかもしれませんが、老舗ならではの佇まいに臆するのではなく、その雰囲気を味わうことを愉しんでみてください。各店の和菓子を、一つずつ手にして、ぶらりと食べ歩くのも良いでしょうし、お土産に持ち帰られても、きっと喜ばれるはずです。
人形町エリアの和菓子屋
- 住所
- 東京都中央区日本橋人形町



