東京都”中央区びと。”に聞く中央区おすすめスポット
伊東旅館
人形町に位置する歴史ある宿として、日本の文化をリスペクトするお客様にご利用いただいています。東京の我が家と思っていただけるおもてなしを心がけています。
- ホームページ
- https://itoryokan.jp/
- 住所
- 中央区日本橋人形町2-31-3
- 電話番号
- 03-3666-6675
コットンペーパークラブ
地下鉄半蔵門線の水天宮前駅からは徒歩2〜3分でしょうか。私の母も顔見知りという吉原のりおさんが営む「コットンペーパークラブ」は、日本橋蛎殻町にある小さな雑貨店です。その入口の立札には「500円以上お買い上げの方、ピアノ弾き語りをお聞かせします。ただし、1000円以上お買い上げの方は拒否権があります」とユニークな文言が目に入ります。店内の小物たちに興味を示したお客さまも、この立札を見ては、ちょっと不安になるかもしれませんね。とはいえ吉原さんによると「入店されたお客さまの多くは、弾き語りを聞いて言葉を交わすうちに意気投合し、心を開いてくれる」のだそうです。このビルの6Fには「スタジオ(奥さまは倉庫と呼んでいます)」があって、意気投合したご友人たちを招いて、演奏会やパーティを開催されるようです。実は私も、フルートを吹くものですから、この演奏会&パーティに何度かお邪魔させていただきました。

このビルの袖看板に「総合輸入小社(株)ニューブリッジ」とあるように、吉原さんの本業は商社なのです。元々は神戸の商社マンで、長くオーストラリアに駐在していたそうです。その後、ブリスベンで船食(せんしょく)という、港に寄港する船に燃料や食料をはじめ、船で必要とするものなら何でも供給するビジネスをはじめたそうです。当時、ニュージーランドの銀行にお勤めの奥さまとは、ニュージーランドのレストランでギターを弾いているときに出会ったといいます。その後、お二人でスペイン・セビリアを旅して、帰国したのが1975年。すぐに株式会社ニューブリッジと名付けた輸入商社を立ち上げられました。このニューブリッジでの本業は、米国ローマンミール社が生産する小麦やライ麦のホールグレイン(全粒粉)を、日本に輸入する際の窓口(コンサルタント)としての業務が中心。この全粒粉を使ったパンは、日本を代表するような製パン会社に卸されています。このほか、生きた米国産馬を輸入して、これを肥育する熊本の馬喰さんに販売する仕事も手掛けたといいます。
そして、1995年に開業されたのが、コットンペーパークラブです。この店名は、当時インドから輸入していた封筒や便箋が、コットンの端切れを使った紙「コットンペーパー」でつくられ、これにニューヨークの高級ナイトクラブ「コットンクラブ」にあやかり「クラブ」を加えて命名されたそうです。当初は、吉原さんが世界を旅して集められたものたちを事務所に並べていたのですが、それらが増えて店のようになっていったといいます。品揃えは、吉原さんが好きな自動車や船や飛行機などのおもちゃ類、そして奥さまが好んで集められるアクセサリーや文房具、食器、キャンドルなどとなっています。どうやら、このお店に関しては、売上を追求するというよりも、不可思議なる店内の魔力に引き寄せられたお客さまとの出会いを求め、お客さまと語らえる空間にしたいという想いに支えられているようです。


さまざまな出会いがありました。近くの出張所に婚姻届を提出してきたというご夫婦が来店されたときには、「おめでとう」と長渕剛さんの「乾杯」という曲を弾き語りました。その1年後には3人でやってきて、お子さんが生まれたことを報告してくれたそうです。外国人の来店も多く、近くの「ロイヤルパークホテル」を定宿とするご夫妻は、年に一度は必ず来日され、下町巡りを楽しまれています。吉原さんが外国人との交流の場としているペンフレンドクラブのイベントで「巣鴨と都電に乗る会」を企画したときには、このご夫妻がガイド役となって参加者を案内されたそうです。ご夫妻の旅の主目的は、やはりこの店を訪ねることで、6階のスタジオには、演奏会のために持参された楽器とアンプが置きっ放しになっています。けっして売上が伸びているわけではありませんが、お客さまと語らい、心通わせる空間にしたいという吉原さんの想いは、この店に、そしてこの店を訪ねてくるお客さまの心に、しっかりと根づいているように感じます。
コットンペーパークラブ
- 住所
- 東京都中央区日本橋蛎殻町1丁目26−6
- 電話番号
- 03-3663-1456



